OSO18を弔う旅~標茶町、オソツベツ、オタクパウシ

(2024.8.11)
記事の概要
・北海道で家畜の牛を襲い怪物ヒグマと恐れられたOSO18についての記事です。
・北海道に行ってOSO18が出没した場所を訪問し、追悼してきました。
・北海道の雄大な自然の写真もご覧頂けます。
目次
1.はじめに~OSO18はかわいそうな熊だった。追悼の旅へ
北海道の釧路周辺の道東エリアで数々の家畜被害をもたらし、「忍者グマ」や「怪物ヒグマ」の異名で恐れられたOSO18でしたが、本当は人間がつくりかえた自然や生態系に翻弄されたかわいそうな熊でした。
2023年10月15日放送のNHKスペシャル「OSO18 ”怪物ヒグマ”最期の謎」の内容をもとに、OSO18についてまとめた過去記事は以下です。背景から知りたい方はぜひ以下の記事もご一読下さい。
過去記事の要点
・OSO18(推定2014年~2023年)は、人間が作り変えた自然の中で翻弄され、ヒグマ本来の食習慣を失ってしまったと思われる。
・OSO18はヒグマの縄張り争いに敗れた過程で、駆除された鹿などを食べる事で肉食に傾いていき、果ては家畜の牛を襲ったのではないかと思われる。
・結論としてOSO18は人間が生態系を操作した事で本来の習性が捻じ曲げられ、生きづらい一生を過ごしていたのではないかと思われ、不憫に感じた。
上述の事から、OSO18はとてもかわいそうな熊だったのだなと思い、北海道に行った折にはOSO18が歩んだ土地を回って、手を合わせて拝みたいとずっと思っていました。この度夏季休暇を利用して北海道旅行に行く事が出来たので、OSO18を偲ぶ追悼の旅をしました。
この記事では風景写真を交えて、旅の道程を綴っていきます。
2.羽田→釧路空港、釧路湿原へ
7月某日、エアドゥ便にて羽田から釧路へ飛びました。

たんちょう釧路空港へ。丹頂鶴がお出迎えしてくれます。

釧路からはレンタカーで移動。まずは釧路湿原まで走りました。

広大な湿原が素晴らしかったのと、野生の鹿を見られた事に感動しました。北海道では大自然の中をドライブしているだけで、普通に野生動物をたくさん見られました。

3.標茶町、オソツベツ~自分の思慮の浅さに気が付き反省
上述の釧路湿原から標茶町、オソツベツに向かいました。標茶町はかなり大きなエリアになります。オソツベツはグーグルマップで言うと以下のエリアです。
※OSO18という異名は、初めて発見された場所の名前のオソツベツと、足跡の幅が18cmだった事かに由来しています。
道道243号阿寒標茶線沿線にある某農場の近くまで行きました(住所的にはオソツベツからは少し外れた場所)。ネットニュースで見た大雑把な地図によれば、この辺りでもOSO18の被害が報告されています。


この時、実際にOSO18の被害を受けたと思われる農場を見て初めて、被害者の存在に想いがいきました。被害を受けた牛さん達や農場主さん達もOSO18同様にかわいそうなんだと気が付きました。どうして今までそこに気が付かず想いが向かわなかったのだろうと、自分の思慮の浅はかさや想いの至らなさを反省しました。
人間がつくりかえた自然に翻弄され野性味を失い亡くなっていったOSO18を弔い合掌しましたが、同時に被害を受けた牛と、気の毒だった牧場主さん達にも想いを馳せました。
4.道道272号沿線~上尾幌駅
JR標茶駅を越えて道道272号に乗って南下していきJR根室本線(愛称:花咲線) 上尾幌駅に向かいました。この道中や上尾幌駅近辺でもOSO18の目撃情報が数多くありましたので、OSO18はこの辺りをさまよい歩いていたのだなと想いを馳せました。

上尾幌駅は誰もいない小さな無人駅でした。
5.オタクパウシ
上尾幌駅から次の目的地であるオタクパウシへ向かいました。OSO18がさまよい歩いて最期に倒れた地です。

OSO18が撃たれ、「駆除」されたのはこの牧草地です。

正確な場所は他サイト様に詳しく特定されていたのでそちらをご参照ください。
OSO18が最期に撃たれた正確な場所に辿り着くまでは難しくて出来なかったですが、NHKスペシャルのテレビ映像で見た実際の景色がそこにありました。最期にやせ細ったOSO18はこの道のりを歩いてきたのかと思うと感慨深く、遂に辿り着いたというある種の達成感を感じました。ここでも手を合わせOSO18を追悼しました。
6.OSO18を撃つべきではなかったという論調について
自然の中で生きる動物を無闇に殺生するべきでは無いという考え方、論調があった事について少し私見を述べたいと思います。私はこの様にOSO18の弔いの旅にまで行っているのですが、撃つべきではなかったという風には考えていません。実際に家畜の被害が甚大になっていたので、駆除されてしまうのはやむを得ない事だと感じています。
問題の根本原因は、人間が生態系をコントロールする中で縄張り争いに負けたヒグマが、人間に駆除され放置された鹿の屍の肉等で食いつないでいく中で、ヒグマ本来の食の傾向が歪んだ形で変わってしまった事だと思います。それにより、肉の味を覚え家畜を襲ったと推測されます。
今後第2、第3のOSO18の出現を食い止める為には、動物や植物の過剰な保護や駆除をしていないか、常に見直し考え是正し続けていかなければならないと思います。(かつて絶滅の危機に瀕した鹿は保護された結果、今度は増殖し過ぎて一転駆除政策に転換されたが、駆除後の鹿が放置される問題が発生した。OSO18はその鹿の肉を食べていたのではないかと推測されている。)
非常に難しい問題なので、一人一人が想いを馳せて考えなければいけないと思います。私自身は何者でもないのでこうして個人ブログで書き綴り、残しておく事しか出来ませんが、この記事を通してどこかの誰かに想いが届けばと願います。
7.知方学、その先の鳥獣保護区
オソツベツ、標茶町、オタクパウシとOSO18の軌跡を辿って追悼して来ましたが、もう1つ行きたい場所がありました。NHKスペシャルの番組の締めで語られていたのは、南へ南へ歩いてきたOSO18は人間の立ち入らない楽園を目指していたのかもしれない、というものでした。その場所とはOSO18が最期に撃たれたオタクパウシより更に南東の鳥獣保護区です。
その鳥獣保護区まで行く事は出来ませんが、なるべく近くまで行こうと思い、知方学(チッポマナイ)という場所を目指しました。
目指したのは上の赤枠エリアです。そこに近づくに連れ、海からの霧が立ち込めてきました。辺りはほぼ真っ白で、10メートル先も見渡せないんじゃないないかと感じ、怖かったです。まるでサイレントヒルの世界でした。
スマホで方角を確認し、OSO18が目指したのかも知れない鳥獣保護区を向き、手を合わせました。

この先の鳥獣保護区の方角は深い霧が立ち込めていました。人間に作り変えられた自然や生態系に翻弄されたOSO18が、人間の侵入を拒むかのような真っ白な深い霧の先を目指していたのかも知れないと思うと涙が出ました。
8.さいごに
この記事では、北海道でOSO18が歩んだ土地を巡った追悼の旅を、写真を交えて綴りました。テレビで見た実際の現場に訪れてみると、画面越しでは感じられなかった想いが込みあがり、新しい発見がありとても意義深い旅になりました。OSO18を偲ぶ旅という事で回りましたが、被害を受けた家畜の牛さんも弔い、農家さん達にもお見舞いの気持ちを巡らせました。
さいごまで記事を読んで頂きありがとうございました。
おわり